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運動と糖代謝

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運動と糖代謝

今更の感はありますが、先日糖尿病に関してご質問をいただき、その中で糖の代謝経路についていろいろ細かく聞かれ、改めて勉強しなおしている次第です。

糖尿病に関しては別稿にて書きましたが、根本的な状態として「糖をもてあましている」と表現できます。

さてこの糖、酸素と同じようにきわめて反応性が高い物質と言うことが言えます。

反応性が高いと言うことは、容易にエネルギーに変化すると言うことであり、様々な体内分子と結びつきたがると言うことでもあります。

ここで少しおさらいを。

糖が細胞内に取り込まれずに血管内でうろつき回るとき、血管あるいは血漿/血清の一部と結びつき、糖化という現象をもたらします。

どちらにしてもタンパク質の構造が変化し、十分に機能できなくなるわけですが、これは通常でも常に起きている反応と言えます。

ただし、必要以上に多いと修復が間に合わなくなり、血管やその修復メカニズムを担う抗酸化物質が安定的とは言えない状況に追い込まれます。

その深刻さは想像以上ですが、日本人の場合、成人男性の30%前後は糖尿病予備軍以上の状態であると考えられています。

しかしながら初期の段階では十分にコントロール可能で、適切な食事療法と運動療法を組み合わせると、十分に安定するケースが少なくありません。

では糖の代謝というのはどのようになされるのでしょうか。

一時的な蓄積、あるいは中性脂肪への変換をのぞけば、大まかには次の経路によって消費されます。

・脳や赤血球といった、糖だけをエネルギー源とする器官によって、インスリンの介在なしに起きる代謝

・体中ほとんどの組織に起きる、インスリンを介在させた糖の取り込み

・骨格筋がATPを使うことでAMPKが作られるが、この作用により起きる糖の取り込み
このとき、インスリンの分泌は低下し、膵島の休息にもなる

運動療法が糖尿病に効く、というのはこの3番目が大きいのですが、この稿では赤血球について少し考えてみます。

ご存じ血液が赤く見える理由のひとつであり、その主な働きは内部にあるヘム(2価鉄を有する分子)に酸素を結合させて、肺から心臓、そして全身に運搬することにあります。

赤血球は酸素分圧の低いところで酸素を放し、高いところで結合する性質があります。

酸素を運ぶわけですから、基本的にはある程度の量がないと困るのですが、これはまた(たいていの場合)適度な運動によって必要上の理由から、その量が増えてゆきます。

またそのエネルギー源は糖だけで、インスリンの力なしで赤血球に取り込まれます。

つまり「適度な運動」は

・赤血球を増やす

・増えた赤血球で糖を消費する

という点でやはり糖代謝を助けてくれるようです。

ただ、闇雲な筋トレや高強度の運動は、現役のスポーツ選手でもない限り、その大半が無酸素下で行われます。

無酸素なので、悠長なエネルギー代謝はせず、筋が内部に蓄えているエネルギーを緊急放出しながら行われるわけです。

これはこれで赤血球が全く増えない/効率が上がらない、というわけではなさそうですが、血中の糖を減らしたり、酸素を使いながら効率よく変換したりなどの反応はごくわずかで、健康を維持するためにはこれだけでは十分とは言えないというのが、現在の生化学の見解であるようです。

また、場合によっては肝臓に負荷がかかり、いきなり糖新生が起きて血糖値の上昇を招く恐れがあるので、十分に注意が必要です。

以下、私の経験から来る「ゆるゆるダイエットを兼ねた養生方の提案」ですが、興味のある方はお試しいただきたい。

正常な場合、食事開始後30~60分程度で血糖値がピークを迎えます。

やや糖代謝に問題がある場合でも大体120分以内であると言われています。

この時間帯、食後のお休みも併せて考えるに食事開始から1時間程度、に10~30分程度の軽めの運動をおすすめ致します。

主婦の方でしたらあと片付けをしたり、お時間のある方はおもむろに歩き始めて、体が温まった頃、苦しくない範囲で少しずつ速度を上げてみる、という感じです。

このとき、運動嫌いになるきっかけがうまれやすいのですが、それは「いきなり心拍数を上げて苦しくなる」が大半だそうです。

程度の差こそあれ、気持ちの良い汗をかくのは、大方の人たちにとって「快感」につながりやすいはずですが、最初っから飛ばしすぎて続ける気が失せてしまうのは、上記のようなやり方が多いそうです。

ご注意ください。

糖はまず胃や小腸で分解、吸収され、門脈を通って肝臓へ送られます。

このとき、肝臓に一時的に蓄えられる分をのぞき、血流に乗ってカラダの各組織へ運搬されてゆきます。

インスリンや糖濃度の勾配などによって各組織に取り込まれますが、これはGLUTというタンパク質によってミトコンドリアに運ばれます。

そこでおなじみの解糖系>クエン酸回路電子伝達系によってATPに変換されます。

ところが使い切れない糖は、ミトコンドリアを飛び出し、細胞質の中でマロニルCoAから脂肪酸へ作り替えられます。

これが現代先進国で大問題になる「脂肪」となります。

これを“必要以上に”増やさないため、血糖を適度に使うのが、食後のゆっくりとした運動と言うことになります。

これはできるだけ習慣づけておきたいものですが、なかなかそうはいかないというのが現状で、失敗の種はそこかしこにまかれています。

私も失敗の経験では人後に落ちませんが、その経験から以下のようなやり方はまずいと感じています。

・はりきりすぎ

最初っからがんばりすぎたり、高強度の運動を取り入れてしまう。
これらはなれていないと、肝臓や腎臓の疲労を招きやすく、大脳をはじめとした制御系もエラーを出しやすい。

・きっちりしすぎ

毎日やらねばと自分を追い込み、いやになってしまうパターンの背景

・食事を含む「我慢」をしすぎ

大抵の場合、食事を極端に我慢できるのはほんの短期間で、その反動が起きてしまい失敗する

さてこれらを回避する「コツ」とはどんなことなのでしょうか。

私自身もいつ崩れるかわからない状態ですが、「まあ失敗してもいいや」くらいにやってみることでしょうか。

プレッシャーに弱い私はそこが一番大切な部分でした。

もう一つ、食事をいっぺんに詰め込まないことを挙げておきます。

完全に糖代謝に異常を来してしまうと別ですが、中高年が糖代謝にエラーを抱えやすくなる原因は「一度に大量に食べる」と言うことが考えられます。

これは先の糖代謝経路のうち、肝臓による蓄積(とはいうものの容量は小さい)をオーバーフローさせるくらいに詰め込むことで、長期的には十分に糖代謝機能低下につながります。

要するに糖が余りやすい状態を作り、結果脂肪の蓄積を促進してしまうのです。

ただ、私自身がそうなのでよくわかるのですが、どうしても食べたい!という欲求に負けそうになります。

このとき「我慢!」も良いのですが、長い間これを続けるのは至難の業であると申し上げておきます。

そこで「足りなければあとで食べる。ただしその総量は以前と同じかそれ以下に設定する」と自分を甘やかしてみます(笑)。

腹八分目をちょっとズルしながら実践してみる、という感じでしょうか。

以上の方法はもちろん合う合わないがあるので、全員に効果的であるとは思いませんが、長く続ける方法としては悪くないのではないかと考えています。
また担当医師から食事や運動に制限を課せられたり、投薬を指示されている方はもちろんそちらが最優先となりますのでご注意ください。
苦しくなるほどの運動も御法度です。

老化は血管から。
すなわち血管攻撃性を低下させることが健康の秘訣のひとつである(かもしれません)。

これを上手にコントロールするための方策として、お試しいただきたいと考えます。

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