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コルチゾール

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コルチゾール

NHKで見た。
こんなことをサイトに載せる私も大概ですが、それが脳という臓器に強い影響を及ぼすと聞いて、今更ながら興味が湧いてきました。

いつものごとく自分自身のためのおさらいから。

いわゆる抗ストレスホルモンとしての働きが強く、副腎皮質から分泌されます。
免疫抑制(炎症反応を元から止める)作用もあり、抗炎症剤として用いられることもしばしばです。
ベースはコレステロールであり、副腎髄質から分泌されるアドレナリンやノルアドレナリンなどに対し協調的に働き、それらが分泌される状況(闘争か逃走:Fight or Flight)においてタンパク質→糖変換を促進します。

緊急時適応を促すため

・高血糖
・高血圧

などの「エネルギー供給スタンバイ」状態が誘導され、臨戦態勢をとるための内部環境を整えるのに一役買います。

さて録画で見た番組のタイトル「キラーストレス」は、許容量以上のコルチゾールが海馬=記憶形成/想起に欠かせない領域をむしばんだり、様々な疾患のベースになり得る・・・と言う怖ーい内容でした。
ただ番組を見た限りでは、コルチゾールが直接的かつ選択的に海馬にダメージを与えうるのか、はたまた他の問題が脳に波及した結果なのか、まではわかりませんでした。

ではこのコルチゾールの分泌制御メカニズムを見てみます。
まず何らかのストレス状態を感知すると、青班核という脳幹神経核のひとつがアラームを発します。
この青班核は大脳賦活、交感神経刺激と言った「興奮状態」へ誘導する端緒となる神経核で、以前書いた扁桃体もこの青班核からの線維を受けています。
当然視床下部へも強く影響し、その分泌物であるノルアドレナリンはコルチコトロピン放出因子の分泌を促します。
結果、副腎皮質刺激ホルモン放出が促進され、副腎皮質が活性化し、コルチゾールが増産されます。

ノルアドレナリンもセロトニンも脳を活性化、あるいは元気を出す伝達物質と言われていますが、

セロトニン:極端な交感神経系の興奮を伴わない
・ノルアドレナリン:突発的なストレスに対する緊急発進を実行させる

などの違いがあり、後者のほうがより多くの刺激そしてその結果としての組織侵害、疲弊をもたらしやすいと言えます。

この交感神経系への刺激により、節前繊維に直接支配されアセチルコリン作動性である副腎髄質は活動をより活発にします。
脳内への影響ももちろんありますが、副腎髄質のそれは脳以外の臓器への影響が強く、受容体を持つ組織に対して反応を促します。
ちなみに降圧剤の一種であるβ遮断剤は、β受容体というセンサーをブロックして、アドレナリンに対する感受性を下げ、血管や心筋の興奮を抑えるように働きます。

ノルアドレナリン、アドレナリンが放出されると、標的組織上にあるα受容体によって自己抑制を行い制御します。

さて様々な局面において分泌されるアドレナリン、ノルアドレナリンは緊急状態に対応する反応を引き起こすため、同時に大量のエネルギーを必要とします。
これに追従性を持たせる、つまりエネルギー産生を促す反応のひとつがコルチゾールによるもので、
ノルアドレナリンの放出に伴い、皮質からコルチゾールの前駆体であるコルチゾン(この時点ではまだ不活性)が同時に放出され、内部代謝を経てコルチゾールになります。

さて大まかなメカニズムはわかりました。
ではこれは選択的に海馬を攻撃しうるホルモンなのか。
いろいろ調べてみましたが現時点では「わからない」あるいは「そんな証拠はない」と結論するしかありません。
ただストレスを感じたときにそれを意味づけするなど“ストレス学習”を担っている扁桃体は、海馬という記憶バンクと頻繁にかつ相補的なやりとりを行っています。
といいますか、扁桃体からの信号は大体のケースにおいて受け取り側の神経細胞を疲弊させます。
また扁桃体視床下部への緊密な投射経路を持ちますが、

・青班核→視床下部によるコルチコトロピン放出因子(CRF)の増加

と言う、ある種のポジティブフィードバックメカニズムをもっているため、これらのサイクルが恐怖や不安を加速させてゆくことが容易に予測されます。
これが近接している構造である海馬に問題を生じやすくさせる背景、なのかどうかはわかりませんが。

あるいはコルチゾールの増加が高血糖→脳血管拡張維持を引き起こすため、理由は不明ながらも海馬周辺の微小血管に負荷をかけるため、海馬が選択的にダメージを負う、という説明も(もしかしたら)出来るのかも知れません。

番組内容で興味深かったのは、これらを解消あるいはコントロールする方法、考え方で、アプローチそのものは割とよく聞くものでしたが、「それを徹底して行う」というあたりに西洋的な(よい意味での)合理的精神が垣間見えました。
仏教概論でもたびたび触れましたが、私たちの脳はその過剰な学習能力や記憶システムによって、過去の成功/失敗体験を元に、これから起きるであろう結果を予測し、先回るように危険/苦痛の回避、あるいは利益/快感を得るための近道を選択しようとします。
ただそれらの体験は定量化されたものではあり得ず、かなりおおざっぱな近似的予想が成立するだけです。
予想→行動に対する評価は、大体は大幅は記憶修正や結果に対する強引な納得をすることによってかろうじて内部の整合性を保っているに過ぎず、体験を重ねるごとにほころびが大きくなると言ってよいでしょう。

この好ましからざる性質によるストレス蓄積に対抗する手段として最新科学の出した答えが「暴走ストレス反応を一時的に停止させる、瞑想や意識現象をずらす方法」であり、これを徹底させることでキラーストレスによる弊害から身を守ることが可能であると、番組では解説していました。

外敵や厳しい環境、あるいは怪我や感染症が致命打になり得た時代に生きた祖先たちは、その内部環境を“肉体的緊急発進可能状態”に保つ必要性から、その方向性を闘争(Fight)寄りに偏らせておくよう進化させたきました。
しかし、現代先進国における“敵”は、直接的な暴力やけがよりも、脳内にはびこる余計な記憶同志が結びついて作るネットワークやそこに生じる先行きの不安へと変化しています。
これは贅沢な悩みなどではなく、私たち人間の通る必然的な苦難の道であり、その迷宮ぶりはカオスそのものと言ってよいほどです。
こういった環境下、進化が残した肉体優先反応は裏目に働き、脳という臓器へ容易に負荷が集中する結果を作り出しました。
いずれは(おそらく100万年単位で)この「脳優先」状況に適応してゆくはずですが、今はまだ手持ちの方法を使ってしのぐしかありません。
自分の内面を評価を加えずただただ観察してみる。
言い古された言葉ですが、大変魅力的な考え方であると私には思えます。

2016年9月11日追記

海馬に関する影響について。

よくよく調べてみたところ、海馬内にはグルココルチコイド(コルチゾールはこの一種)の受容体が多数存在しているとのことでした。
ストレス状態の度合いに比例して、参照しなければならない記憶も増え、そのメカニズムを駆動するため(おそらくブーストをかけるための物質として)糖質コルチコイド類を利用する。
そしてそれは他の神経細胞と同じように、非常に疲弊しやすく、緊急時の反応を続けることは、場合によっては細胞死のリスクを上昇させることにもなる。
NHKが番組内で解説していた「ストレスコルチゾール分泌増加が海馬に対して好ましくない負荷をかける」という説にはきちんとした裏付けが(私が知らないだけで)あった、と言うことになります。
いい加減なことばかり書き散らしてしまい、まことに申し訳ありませんでした。

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