蓄膿症
蓄膿症
意外と多い問題です。
厳密には「元からある隙間(腔)に膿がたまる」ものを指します。
更に私のところで多いものは、上顎洞や篩骨洞などに問題を起こすケースで、鼻づまりや頭痛の原因となるものです。
原因は様々ですが、完全に病理問題を背景とするケースはもちろん私のところではどうすることもできません。
しかしながら治良に対して反応しやすいケースも有り、そのことについて少し書いてみます。
以前に頭蓋矯正について少し私見を書きました。
頭蓋が動く、あるいは矯正が可能かどうかの公平な見解はこの際脇においておき、矯正可能であるという視点から蓄膿症を考えてみます。
蓄膿という現象は、その殆どにおいて熱循環問題を伴います。
たいていは前者が結果、後者が原因となるようです。
つまり「熱がうまく抜けないから膿がたまりやすい状況を招く」と考えることができます。
当然そんな単純な反応ばかりではなく、免疫システムそのものの問題などのケースも有りますので、あくまで「私のところに多いパターン」とお考えください。
話を戻します。
この熱が抜けづらい状況というのは治良的にはどのように説明されるべきものなのでしょうか。
骨、特に頭蓋骨というのは実は「隙間だらけ」とも言える構造をとっています。
すごく丈夫であることを求められる反面、頼りない頚で支える関係上、同時に重量削減を厳しく求められるからです。
上顎骨、前頭骨、蝶形骨などは特に隙間が大きく、これら骨の中にある隙間を「洞」といいます。
骨のあまり知られていないもう一つの性質に「割とクッション性がある」があります。
見た目でわかるほどたわんだりはしませんが、訓練した人間の手には比較的わかりやすい動きとして捉えることが可能になります。
当たり前ですが完全に硬化し可動性ゼロの組織が私達の体に存在するはずはなく、硬い骨といえども例外ではありません。
そのクッション性は生涯を通じてある程度維持されますが、強い衝撃を受けると吸収のためにクッションが使われ、さらに運動エネルギーを放出して周辺を不安定にさせない(と思われる)ような反応が続きます。
先頃亡くなったオステオパスのアプレジャーはその著書「ソマトエモーショナルリリース」の中で「エネルギーシスト(エネルギー嚢=袋)」という言葉でこの反応を説明しています。
これは入力された大きなエネルギー、つまり恒常性を乱すほどの不安定要因を狭い範囲に閉じ込めておくための反射的な処置の結果であると考えていたようです。
この反射反応ともいえる動向は(主に運動エネルギーという)不安定要因を囲うために拡大された生体組織領域を形作り、結果として周辺領域の圧迫と熱変換による長期の復元作用をまねきます。
言い換えるなら常に熱を持った領域を作り、炎症にも似たメディエーターの集中する部位とも言えます。
同時にこの領域は組織のたわみが作り出す体液の微小循環が阻害されやすく、いつも熱を持ち体液が滞り、かつ炎症反応が起きやすく排除されづらい、生体としては好ましくない環境が出現しやすくなります。
平たく言うと「いつも湿って熱っぽい部分」となるわけですが、排液も鈍くなるのですから当然細菌にとっては比較的居心地が良い環境にもなるはずです。
以上が外傷由来の蓄膿症の説明ですが、治良を始めとした頭蓋矯正を行う徒手矯正は、衝撃を囲い込んでいる領域の可動制限を非侵襲的で穏当な方法によって対処します。
私の場合は前稿に書いた間接的なアジャストメントを用いることが多いのですが、直接法を用いて矯正することも有効です。
間接法を使うと、目一杯障害方向へ追い詰められた組織が、まるで行き場を失って前に出ようとしているような感触があり、生きている組織の不可思議さを思わずにはいられません。
こうして熱循環が妥当なレベルに落ち着くと、その領域はもとより周囲の組織の可動性が回復し始め、アプレジャー博士のいうところの「減圧された頭蓋」は滑らかに動き出し、さらなるコンディションの向上が見られることもしばしばです。
私はしばしば説明に「熱循環問題」という言葉を使いますが、それは生化学的な反応によるものよりも、動くところが動いていない、物理的/機能的な側面に基づいていることが多く、治良に反応するタイプの蓄膿問題はその典型的なケースと言えます。