サルコペニア肥満
サルコペニア肥満
恥ずかしながら先日はじめて聞いた言葉でした。
しかしながら、その内容は全く馴染み深いもので、かつ人事などではない話でした。
さて時々「筋肉が脂肪に置き換わる」という話を耳にしますが、これはちょっと不正確な表現と言わざるを得ません。
何度も書いているような気もしますが、私達の身体においてエネルギーの消費経路というのはだいたい決まっています。
おさらいと自分の勉強を兼ねてしつこく書いてみます。
人間の場合、最終的には糖をピルビン酸に分解(ここまでは無酸素反応でしかもすでにあるATPをつかう)し、そこからクエン酸回路→電子伝達系を経てアデノシン三リン酸(ATP)を作り出します。
厳密に言うと生体のエネルギーはこの形でしか利用できません。
ちなみに解糖系の生成物の一つに乳酸がありますが、これは無酸素反応によって生じます。
極めて効率が悪い反面、すぐにエネルギーを得られるので、筋肉などのように素早く機能する必要のあるシステムには必須の物質です。
マラソンなどの持久系運動はこの乳酸を酸素をつかってゆっくりと燃やします(有酸素運動)。
話を戻します。
エネルギー(この場合は糖)の代謝経路はだいたい以下のとおり。
・インスリンによる組織内への取り込み
インスリンが作用すると糖の輸送隊が細胞膜に接近し、それによってミトコンドリアまで運ばれる
・赤血球などインスリン無しでの取り込み
糖だけを(原則)エネルギー源として使う組織でインスリン無しで取り込むケース
・筋肉の代謝反応の結果、糖を取り込むケース
インスリンなしでも糖輸送隊を活性化させられるケースで、骨格筋の運動後に起きる反応
・筋肉や肝臓へ一時貯蔵の形で取り込む
これがオーバーフローするような事態になると結構大変
・その他私の知らない反応によるもの
勉強不足なのでまだ知らない反応だらけのような気がします・・・。
インスリン使用不使用を含めて、通常血中に放出された糖の7割程度は骨格筋が取り込むようになっています。
逆に言うと骨格筋がきちんと取り込んでくれないと、必然的に糖はオーバーフロー気味になり、いつまでも血中にウロウロし、結果として糖尿もしくはその前駆状態になる可能性があると言えます。
運動不足による骨格筋量の低下は、インスリン分泌量を含めた糖代謝低下と相まって、年を追うごとに様々な問題を引き起こすわけです。
また、表題のサルコペニア肥満は私のような中年以降の人間には常につきまとうもので、過食が「ある程度仕方なし」とされている現代社会では極めて重要な問題と言えます。
骨格筋量の低下は
年齢とともに起きるアミノ酸/タンパク質合成の低下
これによる負荷をかける機会の低下
制御系のインパルスの不足による、ゆるやかな廃用性萎縮
等によってもたらされ、多かれ少なかれだれにでも起きることと言えます。
そしてその結果としてエネルギーの代謝、つまり糖の取り込み/消費が落ちてきます。
これは言い換えると脂肪の蓄積が亢進され、いわゆる太りやすい体質が出来上がります。
まとめると
・糖代謝と筋肉量の低下
・これによる脂肪の蓄積の増加
によって、体重や見かけは変化がわかりづらいながらも、内部の代謝を含めた深刻な機能低下
これがサルコペニアと呼ばれる状態なのだろうと考えました。
年をとるほど身体は動かせ
むかし誰かに言われたことを今しみじみとかみしめています。