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グリンパティック

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グリンパティック

長年この仕事をしてきた私も初めて聞く言葉ですが「グリア(糊)+リンパ」から来る造語で、脳内リンパシステムのことを指しているようです。

脳内にはリンパシステムが存在しない、と言われてきました。
それがここ数年「実はある」とちらほら言われるようになり、おなじみ日経サイエンス2016年7月号に載っている「脳から老廃物を排出 グリンパティック系」という記事を読んで、表題の名称がついていることを知った次第です。

グリア(糊)というのは、グリア細胞のことを指していて、これは神経細胞を支える土台あるいは構造的に連結させるための細胞のことです。
しかし単に構造的な支えになっているだけではなく、神経に巻き付いてミエリン(神経鞘)を形成したり、糖→乳酸の変換を促し、脳へのエネルギー供給を行ったりもしています。

さてここでリンパシステムの(自分に向けた)おさらいを。

通常リンパ液というのは血管から周囲へ漏れ出した血漿成分を含む体液のことで、これをリンパ管へ吸収したモノがそれに当たります。
血管内で処理できない様々な免疫反応もこのリンパ管の中がメインステージとなり、さらにはリンパ節という網内皮細胞が密になった「関所」で様々な不要物をこしとり、内部環境を安定させるよう働いています。
基準を満たしたリンパ液は静脈経由で心臓へ環流され、また血管→リンパ管という循環を繰り返します。

ただ上にあるように、基本的にはリンパ管の中を流れ、静脈に合流するため、それらしき構造が見当たらない脳内は「リンパは存在せず」とされてきた経緯があるようです。
では、どうやって脳内で代謝される不純物、たとえばβアミロイドをはじめとする病理を発生させうるタンパク質を分解しているのでしょうか。
この存在がわかる前は脳内代謝物は脳内で分解されるとされてきました。
しかし記事によれば現在不要なタンパク質はそのまま頭蓋外へ排出され、その後に分化されることがわかっているそうです。
つまりそれは「脳内に下水道のような専用導管あるいはそれに類似した構造があり、頭蓋内で代謝処理しているのでは無い」というコトを示しています。
通常、それらは静脈と並行して走るリンパ管ですが、体中そこかしこにみられるような構造はなく、そのあたりがはっきりしていなかったようです。

その基本構造、機能は以下の通り(記事抜粋を含む)。

まず動脈/静脈の周囲でアストロサイトという特殊な細胞がその終端部を変形させ、血管周囲腔という「血管を包むトンネル」のような構造を形作っている。
これは自転車のタイアとチューブの関係に似ていて、その間には構造物がほとんどない。

また水分を選択的に透過させるゲートタンパクをもつ。
これは周囲腔の外壁から脳脊髄側に開くように配置されている。
このため、動脈によって運ばれてきた血糖や栄養分は

・いったんアストロサイト末端(周囲腔を形成している)実質に吸収され、そこからしみ出すように脳脊髄液に移動する。
・逆も然りで、脳脊髄液は外壁に配置された水チャンネルを通してアストロサイト実質にしみこみ、そこから静脈周囲腔を移動し、やがて心臓へ環流する
・この間、様々な代謝が行われ、脳は無事栄養球と不要物排泄をしてのける

と言う経路をとる。

また睡眠時、ノルアドレナリンの濃度が下がると拡張する特徴を持ち、事実睡眠時の周囲腔を流れる体液(グリンパティック液)の量ははっきりと増加する。
このことは睡眠時間が極端に短かったり、ノルアドレナリンの濃度が下がりかけたときに目覚めるとグリンパティック液による不要物排泄機能に影響が出ることを示唆しうるものである。

高齢者に多くみられる「正常圧水頭症」は、その過剰な脳脊髄液を腰椎穿刺で抜くことによって低下していた認知機能も改善することから、脳脊髄液圧力制御機構と頭蓋内リンパシステム、及びそれが与える機能的な影響の関係をある程度裏付けるモノと言える。

要約に考察を加えてみましたが、要するに脳内リンパシステムである「グリンパティック」は脳の働きを維持する上で非常に重要で、脳機能における論理的な考察の「穴」を埋めるミッシングリングとしての役割を果たす蓋然性が非常に高い発見である、と言うことが言えそうです。

このことがわかったからと言って私の治良自体が大きく変わることはありません。
しかし、リンパシステムをスムースに機能させること自体は、徒手矯正技術においてよく観察される効果のひとつであり、頭蓋矯正を行う上で構築すべきイメージをより現実的で身近なモノとしてくれることでしょう。
今すぐにと言うよりも、これからさきこの治良を続けてゆく上で大変有用な記事であると私は感じています。

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