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脳が混乱する理由その2

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脳が混乱する理由その2

前稿脳が混乱する理由その1では総論的(と言うほどたいしたものでもありませんが)に書いてみました。
本稿では「次に」としてたトリガーポイント問題を通してもう少し具体的に考えてみようと思っています。

トリガーポイントとは簡単に言うなら「コリや緊張が戻らなくなってあれこれ悪さをしているもの」となります。
筋や筋膜は使いすぎや疲労、内臓反射などによって運動とは関係のない緊張≒コリが誘発されることがあります。
詳しくは数多ある専門書や一般書をご覧いただくとして、これが生成される理由って上記以外ではどんなものが考えられるでしょうか。

例えばですが、あなたが今「立っている」とします。
立ってそれを維持するというのは実は膨大なデータ処理とそれに基づく反射、そしてそこから作り出される適切な筋緊張を必要とします。
末端のセンサーはもちろん、脊髄レベルでも脳レベルでも合計すると毎秒数千から数万回の反応/反射、演算が行われていると言われ、その都度安定を確保するための命令がこれまた様々なレベルから下されます。

ここで一つ極端なケースを挙げて考えてみましょう。
立っているにもかかわらず脳が何らかの理由で「座っている」と判断したらどうなるでしょうか。
目に見える状況は「起立しいてる」のですが、脳は頑として「座っている」と言い張る。
規律に必要な筋群は各種センサーから送られてくるデータとその反射によってかろうじて緊張しているとして、しかし相変わらず脳は「座っている」としか判断をしない。
脊髄レベル以上の反射、つまりγ環によるプリロードはこの場合においては効かない、あるいは効いていてもとても正常とはいえないはずですから、早晩立っていることが出来なくなると考えられます。
この時骨格筋に起きていることは統合的な制御を離れた脊髄反射レベルの筋緊張であり、筋腹同士はもちろん、腱紡錘や関節内のセンサー、そして視覚/平衡感覚から得られる傾斜や加速度とも無関係に、ただ闇雲に緊張を起すことが考えられます。

もちろんこれらがいつまで続くようであれば即座に脳神経外科を受診する必要があります。
ただし、ほんの数秒あるいは一瞬、こういったことが起きて、しかもそれが割と頻繁に繰り返されるとしたらどうなるでしょう。
つまり脳や脳幹といった中枢が現実との整合性を見失い、結果末梢が混乱する。

飲み過ぎや頭を打ったりして短期的にそういったことがある。
こういったことは割合“珍しくない”ことなのかも知れません。
また血管運動問題を抱えていれば一過性の虚血によるエラーが誘発されても不思議では無いでしょう。

頭が疲れている≒脳のリソースが他に使われているとき、脳は実は意外と簡単に現実との整合性を見失います。
状況を把握できない以上、結構テキトーに反応してしまうのですが、これらが引き起こす「現状に合っていない緊張」は、筋肉レベルでみると適切な栄養供給を受けられない状況もセットになっていることが多いのです。
間質液はともかく、血管運動が最適化されない状況下で起きる緊張は、その部位における低血糖や低酸素をもたらし、緊急時に陥った筋肉は交感神経系へのフィードバックに「もっと栄養をよこせ!」とのメッセージを絶えず送り続けます。
しかし交感神経系の興奮は血管の収縮を招き、それでなくても細い毛細血管を締め付け、栄養供給能を下げまくる結果となります。
ただ間質液があるので完全な梗塞状態にはならず、しかし常に“苛ついた”状態を維持しはじめるようになります。

これを組織レベルで観察してみると、結合組織マトリクスは狭まりかつ応答性が低下。
層状にはさまっている筋膜も周囲の筋膜との連動性が大幅に制限されることになります。
筋紡錘の反応もγ環のエラーで生じた余計な緊張を解除しづらくなり、常に閾値の下がった、つまり過敏な状態で待機することになると予想されます。
こうしてできあがった「硬結(実際には持続するか緊張状態)」は、回復後の脳に対しても整合性の低い情報を送り続け、それを真に受けた脳はまた混乱をし始めるという、困ったループを形成することになります。

もちろん筋筋膜レベルの硬結はこれだけが原因で作られるわけではありません。
ただ意外と多くのケースにおいてこのような「上から下への伝達問題」を端緒に始まることがあり、そういった意味でやはりストレスをはじめとする「脳への負荷」を無視してはいけないなと改めて思う次第です。

さてではこういう問題はどのように解決すべきなのでしょうか。
「治良」という方法論からみれば「脳と末端の間にある不整合を取り除く」であり、それは妥当な肢位を認識させることによって達成される反応でもあります。
以前「体の位置情報の取得エラーが痛みを引き起こす」と書いたことがあります。
「あーあの現象はこれが原因(の一つ)だったのか」と今なら理解することが出来ます。
今現在ある肢位や緊張が脳の“かくあるべし”という処理状況と合致せず、それ故に余計な処理を発生させリソースを消費させた結果生じる不快感だとすれば、緊張を生じさせない肢位を誘導し脳にそれを“実は今の状態は安定しているんだよ”と教育すれば解決します。
そうです、やはり以前挙げたストレイン・カウンターストレインのアプローチ、もしくはその延長上にある考え方を用いればよいわけです。

もうひとつの有力な方法は「もみほぐす」です。
硬結が低酸素低栄養によって生じ、それが自律的な反応だけでは解除できないのであれば、いったんその「異常な安定状態」を外力によって破壊するというのは、理にかなった考え方と言えるでしょう。
ただ弱点というか留意しなければならないのは、適切な力加減で行わないとその部分に炎症を引き起こし、かえって問題をややこしくする可能性がある、と言うことです。
このあたりも訓練や練習が必要なので、技術や経験がついて行かないうちは力任せにごりごり揉みつづけるのは控えた方が良さそうです。

全例において「そうだ」と断言するつもりはありませんし、脳に強い影響を及ぼす薬物を使った場合などは除きますが、「気持ちがよい」と感じることは脳が適切な処理状況に置かれたことを意味し、それはとりもなおさず疲労した中枢神経系に対する休息や回復をもたらすことになります。
上意下達システムに余裕が出てくれば、末端から上がってくる情報処理もスムースになり、より効率的で安定したサイクルが確立されます。
トリガーポイント問題もこうして回復することだって十分に考えられます。
ちょっとした居眠りや適当な栄養補給が驚くほどの回復をもたらすことは誰もが経験しているでしょう。

自分の体を大切にすることはとても重要である。
こうした当たり前の判断が出来なくなったり、疲れていてもさらに激しく消耗するようなことを続けてしまう前に、適切な休息や方法で脳の混乱を防ぎたいものです。
心当たりのある方は我が身を省みて下さいね。

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