頭蓋矯正
頭蓋矯正について
これから書くことは「頭蓋が動くと考えている人間が、以下のようにイメージしてセットアップを進めている」ものと考えてください。
また私たちの言うところの「クレニアルテクニックを行う」人たちが、彼らの言うように実際に動かしているのかどうかまではわかりませんので、そのあたりもご了承ください。
頭蓋矯正の起源については諸説ありますが、19世紀の終わりくらいにはこの考え方の原型が発表されていたそうです。
頭蓋は胎児期から乳幼児期にかけては、それぞれの骨が完全に癒合しておらず、少し隙間が空いた状態で産まれ、長ずるに従ってくっついて一枚の骨になります。
ちなみに頭蓋は 頭頂骨×2、前頭骨、後頭骨、蝶形骨、側頭骨×2、篩骨(+篩骨篩板)、鋤骨、上顎骨、口蓋骨、鼻骨、頬骨×2、上顎骨、下顎骨、涙骨×2、茎状突起×2で成立しています。
頭蓋矯正の理論背景は、これらの骨が(癒合後も)独立しつつ連動して独自のモーションを起こしていると考えるところから始まります。
それが機械的あるいは神経生理的な影響を及ぼし、これを矯正することで体の安定性を取り戻す、という論理がその根幹をなしています。
カイロプラクティックやオステオパシー、その中のテクニックいくつかが頭蓋矯正に言及しています。
ただしテクニックによってそれぞれがばらばらな主張をしています。
たとえば側頭骨の動きひとつをとっても吸気/呼気に連動するモーションが真逆だったり、動きそのものが違う場合もあります。
どれが正しくどれが間違っている、という議論にはあまり意味はないので、わたしの知っている範囲のお話をします。
下顎骨をのぞいて(ほとんど事実上)一枚の骨であるはずの頭蓋が動く、というのを(治療経験のないひとたちは)どのように理解するべきなのでしょうか。
私たち訓練を受けたセラピストは、ある分野の感覚において多少の敏感さを有しています。
そのような人間が頭蓋にタッチしてじっと観察するとき、奇妙な感触が伝わってくるのを感じます。
それは波打つような、うねるような、それはちょっと不気味といっても差し支えない感触です。
これは呼吸や心臓の鼓動、そのほかのいかなるリズミカルな動きとも同期しておらず、しかしゆっくりと確実に動いているように感じられます。
このとき各々の骨のつなぎ目(縫合という)がギアのようにかみ合いながら、謎の駆動力によってもたらされる動きを支えていると考えられているようです。
また一般に考えられているよりも、その継ぎ目同士の間にあるバックラッシュは遙かに大きく、人間の感覚に訴えるに十分な動きを提供しているとも考えられています。
実際の縫合は、硬く癒合しているという説と、若干だが膜組織を挟んで緩やかに結合しているという説があります。
どちらも説得力がありますが、手の中で感じられる“奇妙な感触”を説明するためには、縫合に限らず頭蓋全体が動きを許容する構造であると考えた方が都合が良さそうです。
次回から各骨の動きとその影響について考えてみたいと思います。