頚椎の矯正
頚椎の矯正
私は元々はマッサージ師、修業先も一般操作という弛緩操作をしてから脊椎矯正を行っておりました。
脊椎矯正を行う、その理由は「背骨は脊髄神経が走り、末梢に枝を出している。その出口が脊柱のねじれで圧迫を受けていると機能不全を起こすので矯正する」というものです。
神経圧迫説 再びをお読みいただけるとわかるのですが、その主張の根拠はとても弱く、それ自体は説明としては不的確であると考えられています。
ですがリアルワールドではなかなか侮れない成果を上げています。
これは再三書いていますが、理論やその説明に妥当性があるかどうかと、実際の効果があるかどうかは別問題であると私は考えています。
その脊椎矯正ですが、部位によって少しずつ違う勘所が必要になります。
特に頚椎はその可動性の大きさや、周辺組織の脆弱さのため、矯正をする際には細心の注意が必要となります。
無理なセットアップや力任せの矯正は絶対に御法度、と言うわけです。
頚椎には限りませんが、周辺靱帯の伸張をもって機能改善を図ろうとする方法があります。
頚椎の場合はロータリーブレイク(Rotary Break)と言います。
ターゲットとなる椎間をきめたら、可動性の少ない方向へできるだけ捻っておいて、これ以上いかないというところからスラストを加えます。
周辺靱帯が椎間の事情により緊張してくると、その内部に疲労物質蓄積によるガス気泡が発生します。
これを一気に伸ばすとそのガス気泡がつぶれて矯正音が出ます。
伸ばされた靱帯の周辺は、緊張のためにおきるインパルスが交感神経の興奮を惹起しますから、常時不安定になりやすいのですが、それが解かれると血行が戻ってきます。
おそらくはそのようなメカニズムによって治癒のきっかけをつかむのだろうと考えられます。
勿論緊張の理由を探らない場合、あるいは緊張が一筋縄では解除できない場合、もしくは安定性を維持できる体力がない場合はすぐに元に戻るか、逆にひどい状態へ移行してゆきます。
特に交感神経の緊張が限度を超えている場合、負荷に対するリアクションはとても微妙なものになります。
理想的な状態に戻るためにも体力というものが必要になります。
低いレベルで安定していたものをいったん壊し、より高いレベルで安定させようとすると、そのギャップを超えるためより多くのエネルギーを要求されます。
しかし交感神経節がその役目を果たすための備蓄がないと、アクセラレーションは起こらず、負荷が加わった分だけ消耗がおきます。
ましてやそれが不正確なポイントに加えられたときのことを考えるのは、専門家としてはとても苦痛であります。
技術の不十分な人間が無茶をすると怖いのはこういうケースも含まれます。
簡単に音が鳴るからといっておもしろがって、あるいは安易に行う。
頚椎においてはきわめて危険な行為であることを私は指摘しておきます。