清潔志向
清潔志向
洗顔だけではありませんが、最近は「洗いすぎ」による肌荒れに遭遇することが少なくありません。
手でも顔でも体でも、ともかく毎日毎回入浴しては洗浄力の高い石けんをつけ、ごしごし洗いまくるようなのです。
勿論清潔さを保つことは必要ですが、それにしても「やり過ぎでしょ」と言いたくなるような人が増えています。
皮膚の表面はたくさんの雑菌、特に乳酸菌をはじめとした菌群が無数に生息しています。
これは人にとって有害な菌の繁殖を防ぐ働きをしており、物理的化学的バリアの一つと言えます。
この必要な菌達は皮脂という、皮膚から分泌される脂肪酸をそのエネルギー源としています。
夕方顔がべたべたすることがありますが、これは皮脂を食べて元気になった菌群も含まれており、ちょっと気持ちが悪いですがまあ必要な反応であります。
ところで石けんをはじめとする洗浄効果のある物質は界面活性作用という作用を持っています。
界面活性剤というのは親水基と親油基両方を持っている物質のことをさします。
どちらにもなじみやすい性質を持っているわけです。
通常水と油は混じり合いません。
つまり水をかけるあるいは水につかるだけでは体の表面にある脂はその流れについて行ってはくれません。
そこで界面活性剤を含む洗浄剤を使うと、水と油は混じり合いやすくなり、水の流れに沿って油も流れていってくれます。
これが石けんを使うとつるつるになる理由です。
ちなみに胆汁酸も界面活性作用を持っていますから、十二指腸では胆汁によって膵液と油が混じり合って分解されやすくなります。
このように皮脂をがんがん洗い流す洗浄剤を使って、ごしごし皮膚をこするとどうなるか。
当然皮脂は皮膚に定着する暇が無くなり、それをえさにしている皮膚表面に必要な雑菌は繁殖できなくなります。
その間隙を縫ってあまり好ましくない菌群が勢力を伸ばし始めます。
これを日和見感染と言い、広義には免疫異常として問題となっています。
たいていの場合これらの菌群が繁殖すると、免疫システムはそれらを異物として認識します。
おきるのは炎症反応。
つまりは皮膚炎の原因の一つとなり得るわけです。
もちろん洗浄剤を使ってそれらの炎症原因となっている菌を洗い流すのは間違ってはいません。
ただ最近の傾向として、あまりに洗い過ぎだったりこすりすぎだったりすることが多いのです。
そして洗浄剤そのものに過敏性を持っている場合、使うたびに肌荒れがひどくなる結果となります。
何事にも程度というものがありますが、清潔志向も行きすぎるとつまらないトラブルを抱えるという点では、先人達の言うとおりというわけです。