小脳の機能
小脳の機能
最近検査をしていると、明らかな小脳機能問題が増えつつあるように感じられます。
いつもながらただただ自分の勉強のために書いてみます。
小脳-Cellebellum-は脳幹の背側に位置しています。
中脳/橋/延髄とはそれぞれ上小脳脚/中小脳脚/下小脳脚で結ばれています。
入力ラインでみると三つに分かれます。
前庭小脳:最も古い小脳領域で、前庭神経核からの入力を受け入れる。
脊髄小脳:古小脳領域に一致し、脊髄小脳路からの入力を受け持つ。
橋小脳:霊長類で発達している。橋核を介して大脳皮質へのアクセスを間接的に受け持っている。
その主な機能は平衡機能および協調運動統合であると考えられています。
また近年、運動パターンの蓄積に関わる重要な中枢であると言われるようになりました。
少し詳しく書いてみます。
下肢の深部感覚(意識に上らない筋や関節のデータ)は後脊髄小脳路というルートをたどって同側の小脳に到達し、姿勢制御や協調運動の一端を担っています。
後があるなら前もある、つまり前脊髄小脳路も存在します。
こちらは後脊髄小脳路の前側を上行し、やはり同側の小脳に到達します。
こちらは延髄で交差した後、橋でまた交差して結局同側へ投射すると考えられています。
では上半身の深部感覚はどうなっているのでしょうか。
これは延髄副楔状束核という部分から起きる繊維が小脳にそれを伝えます。
ここには楔状束核小脳路が入り込んでいます。
大脳皮質からのアクセスポイントは橋にある橋小脳路が受け持ちます。
例)右大脳皮質>右橋核>左小脳といった具合になります。
ここで小脳からの出力系をみてみます。
視床、赤核、前庭神経核の三つがその主な経路ですが、特に前庭神経核への多さが目立ちます。
赤核は延髄下オリーブ核への投射がループバックして再び小脳へ経路を作っています。
視床は外側腹側核へ繊維を送り、これが大脳運動野へ、そしてその信号をが胸郭を経由してやはり小脳へのループを形成しています。
このことからもわかるように、小脳は命令系統と言うよりはチェックシステムの中枢で、運動野から発せられた命令が正しく行われていたかどうかを常時監視している器官と言うことになります。
ただ、最近の研究では高度な思考状態あるいは言語に関する関与もわかってきており、高次脳機能においても欠かせない器官であると認識されるようになってきました。
小脳の前庭神経核への投射の多さは小脳が平衡感覚にきわめて密接に関与していることを示しています。
実際小脳に問題を抱えると、内耳機能問題の時とは違い開眼時でもふらつくようになります。
内耳機能のみだと視覚による補正が効くことがありますが、小脳問題の時にはそれが効きづらくなります。
これは小脳が頭部の位置調整やそれに連動する眼球運動を統合制御していることがその理由です。
下小脳脚によって延髄とつながっている部位の問題は、構音障害や運動失調を伴わないめまいが出現することがあり、末梢性のめまいとの鑑別が必要になるケースが最近とても多くなっています。
ではこの小脳問題が起きる背景は、どのようなことが多いのか改めて考えてみました。
あくまでクリティカルな問題が存在しない前提で、かつ徒手矯正それもオステオパシー寄りで考えてありますが、直接の問題としては上矢状静脈洞周辺の圧力コントロールに難がある場合が多いと感じています。
静脈洞は脳脊髄液を循環させる経路であり、次の順路を形成しています。
側脳室脈絡叢(脳脊髄液=CSFが産生される)>室間孔>第三脳室>第四脳室>一部がくも膜下腔から脳実質の外周を循環して上矢状静脈洞のくも膜下流から吸収>静脈に回収される
小脳は小脳テントという大脳鎌が分岐した膜組織に覆われていますが、この少し上方の分岐直前のあたりに膜の緩みが生じているケースがあります。
この背景には大脳鎌の前方付着部である篩骨篩板、ないしは上方付着部である頭頂骨のアライメント問題がかんでいることがほとんどで、小脳問題とおぼしき症状を抱えたケースでは第一のモニターポイントとなります。
なぜこのような状態になり得るのかですが、これは様々な理由があります。
それが食事に起因することもあれば、ストレスがらみのこともあります。
古い外傷による制限も考えられますし(実はとても多い)、頚部筋膜を含む構造的な問題によることも少なくありません。
また特定の筋膜や関節のセンサーが適切なレベルで信号を送れなくなり、それが継続しても小脳はその過剰/過小なインパルスと他のデータの間での整合性を失い、混乱した結果問題を生じることがあります。
ふらつく、歩行や運転時に片寄る、一連の動作がスムースに行かないなどの症状が出現したら、まずは脳神経外科へGO!です。
それでも問題が発見されず症状も落ち着かない場合は一度治良を試してみることをおすすめします。