一酸化窒素 2
一酸化窒素 2
一酸化窒素について何度か書いてきましたが、もう少し詳しいことがわかりましたので追記してみます。
一酸化窒素が血管運動に及ぼす影響については以前にも書きましたが、神経伝達や脳の働き、特に記憶にも影響を及ぼしていることは、最近読んだ本で知りました。
血管を構成する細胞群では、拍動や蠕動運動などの物理的刺激や、アセチルコリンなどの化学的刺激によって持続的に一酸化窒素を作り出せます。
これらが血管の収縮を適度なレベルに押さえ、血流のスムースさを維持するのに役立ちます。
バイアグラなどのED改善薬と呼ばれる薬は、一酸化窒素によって活性化された物質が血流を維持しますが、これに似た構造を持つことで血流を促進することから使われています。
では脳、特に記憶に関してどのように働いているのでしょうか。
記憶のメカニズムについて少し書きます。
以前は記憶物質なる、記憶をとどめておくためのペプチドのようなものが想定されていました。
この説は再現性に乏しく、現在ではほぼ否定されています。
脳は生後その細胞数を増やしたりはしません。
しかし、そのネットワークは通常成長とともに複雑さ、リンク数をましてゆき、特定の状況をリンク増強(シナプスの安定性)することで容易に再現可能にしています。
これが記憶のメカニズムである、と現在は考えられているようです。
記憶だけに限りませんが、シナプスという神経間のつなぎ目は、ほんのわずかですが隙間が空いています。
電気信号は神経末端、つまりシナプス前繊維を興奮させ、グルタミン酸などの化学物質を後繊維に向かって放出します。
このとき、カルシウムイオンチャンネルが開くような反応が起きますが、同時に連続的に一酸化窒素が合成されるような酵素も作られます。
結果、一酸化窒素が合成され、次々と放出されてゆきます。
どうやらこの現象が記憶を形成するために重要な働きをしているらしいのです。
ペプチドとしての神経伝達物質は、一過性、非拡散性、特異性を持ち合わせていることが多いのですが、一酸化窒素は単純な二原子物質であるため、その縛りがありません。
水の中でも脂肪中でも自由に行き来でき、あらゆる細胞にレセプターがある(と思われる)一酸化窒素は、非常に優れた伝達物質であると考えられており、その詳しい性質の解明が待たれています。