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Case-11

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Case-11

浮腫むという現象

この仕事を長いことやっているとこの「浮腫(むくみ)」とよく出会います。
メジャーなところでは概ね二つの原因によって生じるとされています。

1.循環システム問題
心臓は血液を動脈を使って末梢まで押し出し静脈を使って心臓へ戻します。
この時心臓の力が弱いと十分に還流されず、特に足先部分では重い水分を捨てざるを得なくなります。
この捨てられた水分が多く、かつリンパ管を使っても十分に心臓へ戻せないとき下肢のむくみなどが出やすくなります。
腎機能が低下しても血中の水分量をコントロールできなくなり水分過剰を招くことがあります。

2、血漿タンパクが十分に無いとき
血漿タンパクにはグロブリンとアルブミンというものがあります。
後者のアルブミンは血中に水分を引きつけておく役目をしており減少すると血管から水分が漏れ出しやすくなります。
腹水などはこれが主な原因と考えられています。
肝臓能低下などで起きることが多く、全身に起きるむくみはこれが原因のことが多いようです。

もちろん上記のような状況下ではのんびり調整なぞしている場合では無く、すぐに専門医の診断と標準医学による適切な介入が必要となります。

私たち徒手療法家がよく目にするのはそれ以前の、誰にでも起こりうるしかし指で押したくらいではわからないレベルのものです。
もちろん普通に触診しただけではわかりづらいのですが、自身の呼吸を落ち着けて観察してみると明らかに間質液の流れが滞っているのを見つけることは日常的にあります。
そんな中興味深いケースに遭遇しました。

60代男性
主訴:朝手が握りづらい。
基本的なバイタルは正常だが1年ほど前から狭窄性腱鞘炎(軽度)を発症。
狭窄性腱鞘炎は腱をホールドしている腱鞘や靱帯の腫れが原因で、腱の滑走性が低下した結果曲げ伸ばし時に引っかかるような動きと痛みが出るものです。
外傷や感染症、加齢によって起こりやすくなる問題ですが、血行障害を伴いやすく動きの少なくなる就寝から起床時曲げ伸ばしがしづらいという症状が出やすくなります。
検査開始。
左第三指輪状腱鞘に腫れがある。
ものを強く握った際に微少な損傷が生じ、それが発端となって発症につながっていると考えられる。
通常の修復措置を施し1回目を終了。
2日後に2回目。
しかし輪状腱鞘の修復は進んでいるのに症状に変化は無いと訴える。
再度チェックしてみると、皮膚や直下の結合組織、筋膜は柔らかくなっているが妙に骨の手応えが硬い。
「?」となったが、考えてみると骨自身も水分の出入りはある。
どうも骨が間質液を吸収してパンパンになっているようである。
自分の診立てが妥当かどうか(初めての遭遇で)はっきりしないのでとりあえず骨から余分な水分を追い出すように操作してみる。
3日後3回目。
症状は明らかに軽減し、ほぼ問題の無いレベルにあるとのこと。
触診してみると骨も柔軟さを回復していた。

これ以降むくみ、特に骨自体の状況を注意深く見るようになったが、意外なほど多くのケースで「骨自体が硬い」コトがわかった。
そして骨自体の状況を放置しておくと症状の改善が進まないことも多かった。

考察
皮下に水分が置き去りにされると当然むくみが発生するが、骨は幾ばくかの水分貯蔵を行う「バッファ」とのしての役目もあると思われる。
当該部位に適切な負荷をかけることが多ければ、本来スポンジーな組織である骨からも余分な水分は押し出され還流されやすくなるはずである。
逆に負荷を適切にかける機会が少なければ押し出し効果も小さく、皮下リンパの弱い負圧程度では安定的に貯蔵されている水分を吸い出すことは出来ない。
これが高じれば骨が「硬くなる」という現象が生じやすくなると考えられる。
硬くなった骨は体積や表面積が増大するので微小な血管群には十分な負荷となり得る。
本ケースだけでは無く意外と多くの臨床症状がこの問題と関わっている可能性はある。
或いは症状が長引く原因となり得ると考えられる。

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