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運動と脳の関係

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運動と脳の関係

さほど詳しいとも言えないですが、脳という臓器に興味を持ち始めて結構時間が経ちました。
いろいろなコトがわかった(つもり)のですが、最近急増あるいは認識されるようになった発達障害や自閉スペクトラム問題、あるいは鬱状態と呼ばれる「明らかに脳という臓器に起きた機能問題」が、ここ最近の興味の焦点になっています。

自分自身でも「今日はなんだか気分が乗らないな」「風邪でもないのに体が重い」といった感覚を持つことは珍しくありません。
幸いにして朝の習慣である散歩やランニングと言った軽い運動をすることによって、始業時までそれを持ち越すことはありませんが。
風邪をはじめとした所謂生理病理的な問題がある場合、運動でどうこうなるものでは無いことはわかっているので、運動が脳という臓器あるいはその下支えをしているシステムに好ましい影響を与えることも、自分という個体においてはあるといえそうです。

では一般的にはどうなのでしょうか。

治良をしていて「気分の落ち込みを訴える方たち」に対する私の感想は、その多くのケースにおいて「手応えが硬い」というもので、これは別の見方をするならばあちこちに機能制限があることを示しています(必ずしもそうとは限りませんが)。
私たちの操り主である脳という臓器についていうならば、伝達物質の量あるいは反応が明るい気分をもたらすには十分ではなくなっていると言えるでしょう。
ただしその背景については少し考えてみる必要があります。

さて少し話は飛びますが炎症という反応について。
これは基本的には「その部分の損傷を一刻も早く修復させようと体が起す反応」で、なければ一日たりとて健康を保つことが出来ないモノと言ってよいでしょう。
炎症は目に見えるものだけではなく、特に血管内においては局所ホルモンと呼ばれる生理活性物質によって常に微少なレベルで繰り返され、血管やその内部を流れる血液性状の維持に根本的なレベルで関わっています。

プロセスの一つですが、まず細胞膜に存在する不飽和脂肪酸の一種であるアラキドン酸の遊離が行われます。
そこにシクロオキシゲナーゼ(cox)と呼ばれる酵素が作用。
プロスタグランジン(PG)が生成され、様々な生理活性物質が生まれます。
因みにステロイド剤と呼ばれる副腎皮質ホルモン剤はアラキドン酸の遊離を行う酵素をブロック。
Nsaidsと呼ばれる非ステロイド系消炎鎮痛剤は(概ね)coxをブロックして、PGが作られないようにします。

免疫系をはじめとした様々なシステムと連携して、これら「体を調えるための炎症」は制御され、適切なレベルになるよう常時監視されています。

しかし細胞膜にある不飽和脂肪酸の割合が不活性型(トランス型)優位だったり、ホスホリパーゼA2が何らかの原因で機能低下を起すなど、必要な炎症まで起きないような状況に陥ることがあります。
逆に適性レベルとは言えない炎症がそこかしこで起きやすくなっている場合、周辺組織においては炎症レベルに対応したエネルギー消費が行われると推測されます。
さて問題はここからです。
このPGと言う生理活性物質の多くは局所ホルモンと呼ばれ、生成された部位からあまり遠くへは流れてゆかず、ごく狭い範囲でその役目を果たすことが多いのです。
局所で生成されそこだけで消費される生理活性物質は、血管全体に行き渡るわけでは無いので、血液検査などでよくみる「炎症反応を示す項目(CRP)」などには反映されづらく、事実上ないものとして見過ごされる傾向があります。
しかし必要のない炎症反応が起ち上がり、それが適切に制御できずに血管透過性などが上がったままであると周辺組織の過活動が持続されると推測されます。
これが神経細胞という極めて脆弱な耐久性しか持たない細胞群で起きたとき、その細胞の応答性は上がるでしょうか下がるでしょうか?
ごく普通に考えるならば「一時的に上がるけれど、すぐに下がった状態で推移する」というのが答えになります。

鬱あるいは発達障害や自閉スペクトラムと呼ばれる状態の多くは、特定の神経伝達物質が出ない、もしくは反応しないことがその基本メカニズムとしてあります。
適度な興奮が出来ない理由は数あれどですが、特定の神経核やそれで構成されるサーキットが適切に機能しない、あるいはてんでんばらばらに興奮が起ち上がり、必要な情報や命令を生成できない生化学的なメカニズムはおそらく上記のことに収斂するだろうと考えています。

この「局所における炎症の過剰状態」は、脳内においてはグリア細胞の不安定さを誘導し、結果として血管周辺のリンパ様構造の機能低下を招くものと思われます。
さらには周辺神経細胞の絶えざる興奮を作っていると考えるのはあながち間違っているとも言えない話だろうと考えます。
単純に考えてもこういった状況は熱循環効率の低下を招き、それ故炎症に移行しやすい反応の素地が作られ、高エネルギー状態から抜け出しづらくなるでしょう。
そしてその多くは過剰な飲食が招く高カロリー摂取と関連があるとされています。

ただ、人体というのはその消費層カロリーにおいては、運動していてもしていなくてもそう大きな差はないことがわかってきました。
二重標識水法という厳密なチェック方法が確立されてからは、それがはっきりしてきたそうです。
つまり運動をしてもしなくても、使うエネルギーに大きな差は出来るわけでは無く、男性であれば2500kcal(多少の差はあるようですが)あたりで頭打ちになるようなのです。

一方WHOをはじめ、各国の研究機関や研究者たちは多くのケースを調べ、運動が多くの疾患や気分障害に有効であることを示してきました。
上の話をある程度有効であると自分で認めるとして、運動がどう脳に効くのかを考えてみます。

まず思い浮かぶのは「消費量」よりも「消費効率」の問題です。
脳の血管においてはインスリンの手助け無しに糖を取り込むGLUT1の助けによって、多くの糖が燃料として使用されます。
これはともすれば過剰な糖の流入を招くことにもなり、拡張した血管を保護するように様々な興奮状態が誘導されると考えられます。
放置しておけばあっという間に荒れてしまうのが脳とも言えるでしょう。
なので「糖の取り込み(熱の移動)は時間との勝負」とも言えます。
一方で骨格筋による糖の代謝量は脳よりもはるかに大きく、単位時間あたりの消費量が分散されれば脳に対する過剰なエネルギー集中は防げそうです。
結果として脳内における必要のない炎症反応はその頻度や程度を下げ、統制のとれないシナプスの使用は控えられるでしょう。
結果として休息を与えられた神経核やサーキットは、必要な伝達物質に反応すべく自己修復をはじめるかも知れません。

一日の使用総カロリーが概ね頭打ちになる傾向が強い我々人間は、どこにエネルギーを振り分けるのかでずいぶん違う状況、特に脳という繊細な臓器においては、をまねく傾向が強いと言えそうです。

もちろん運動ですべてが解決するとか、運動をしなければだめであると申し上げているわけではありません。
ただ「いい汗をかく」というのは、気分障害や脳の機能制限問題に全く意味のない行為ではなさそうだといえるのではないでしょうか。

気分が乗らないときに体を動かすのはすごく大変ですし、他の病理疾患があればかえって不味い状態を招くことも考えられます。
そんなときは寝たままでもよいですから手や足の指、あるいは手首足首を動かしてみて下さい。
気分がよくなれば儲けもの、変わらなくても気分が悪くなっても即座にやめることが出来ます。

体を動かして脳内の不要な負担を減らす。
興味のある方は試してみて下さい。

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