腱と靱帯 2
腱と靱帯 2
前稿では腱について書きましたが、今回は靱帯について書いてみます。
靱帯は結合組織という、硬い構造タンパクでできた組織で、骨と骨とを結びつけて関節を形作っています。
また手首や足首に見られるようなバンド状の構造を取ることもあります。
腱はその機能的必要性から多数のセンサーを内蔵し、関連組織の負荷を分散させる働きもありますが、靱帯は(私の知りうる限りでは)関節周辺の構造強化に特化したものばかりです。
構造タンパク、主にコラーゲンからできていて、あまり伸張はしません。
無理に引き延ばすと引きちぎれるように伸びてしまい、長時間放置しておくと非常に戻りが悪くなります。
場合によっては裂け目に樹脂のような組織が充満し、完全に伸びきってしまうこともあります。
ですから脱臼やねんざの場合はできるだけ早い時期の適切な処置が求められます。
関節を包む靱帯、すなわち関節包の内面は滑膜という、ムコ多糖体に覆われた摩擦軽減のための膜がついています。
関節、たとえば膝などは激しいスポーツなどで酷使すると、この滑膜が関節包から遊離するような動きを始終強要されることになります。
それが完全に回復しないうちにまた負荷がかかると、最終的には遊離して吸収されてしまいます。
この程度であれば休養していれば治るケースも多いのですが、ここからさらに無理をすると滑膜がほとんど失われてしまうこともあります。
滑膜は関節内部に粘液のようなものを絶えず分泌しているので、なくなると機械としての効率に重大な影響を及ぼす可能性があります。
滑膜がほとんどなくなってしまった関節はちょっとした動きで内容物同士がぶつかり、強い痛みを伴った制限が出てきます。
ヒアルロン酸などの補給が効果を示すこともありますが、しばらくはおとなしくしていないと、半月板などの丈夫な組織まで痛めてしまい、非常にやっかいな状況に追い込まれます。
周辺組織に負荷をかけ、上位問題を検出した上での正確なアジャストメントが必要で、回復にはかなり時間がかかると考えるべきです。
筋肉と違ってなかなか鍛えづらい部分なので、負荷をかけすぎる古い筋力トレーニング方法で痛めることもしばしばです。
またオーバートレーニングによる疲労や水分不足にきわめて敏感で、トレーニング翌日に節々が痛むときは、靱帯にダメージがたまっていることが多いので十分な休養が必要です。
腱にしても靱帯にしても加齢とともにその出力や耐久性は確実に低下します。
またその制御系も連続した使用を押さえる方向に働き、老化を感じさせる一因となります。
人のことは言えませんが、中年以降の無茶なトレーニングはきわめてリスクが高いので、十分に注意をして行うことをおすすめいたします。