構音障害
構音障害
前回の続きで神経系の反応と検査について書いてみます。
長く臨床の場に立っていると表題の「声およびのどの問題」にはよく出会うようになります。
原因としては咽頭喉頭の病理疾患から、甲状腺の問題までいろいろあります。
かくいう私も声のかすれ、のどの詰まったような感じに悩まされたことがあり、年齢的にも性別的にも「もしややばい状態?」と恐れおののいたことも一度や二度ではありません。
緊張して耳鼻咽喉科で診察を受け「問題なし」といわれてほっとしたこともあります。
まあさっさと専門医を受診すればいいのに、と思うわけですが、同時にほとほと自分の小心さにうんざりしたりもします(笑)。
特定の病理疾患の説明は成書に譲りますが、案外多い問題の一つに「軟口蓋の麻痺」というものがあります。
軟口蓋とは口蓋垂手前にある、柔らかい部分を指します。
ここは発声時、口蓋帆挙筋などによって上に持ち上げられ、鼻腔との交通をふさいだりもします。
神経支配は舌咽神経。
ご家族の誰からが「うまく声が出ない、鼻声になる」というとき、少しだけ上向きで口を開けてもらってください。
ペンライト(があればとても観察しやすいです)を当てて、「あー」と声を出してもらいましょう。
口蓋垂の手前の部分は左右平等に持ち上がっていますか?
どちらからが十分に持ち上がらず、下がったままならば軟口蓋麻痺があります。
原因は様々です。
先に挙げた舌咽神経の麻痺。
とくに麻痺側につきだした舌が偏る場合、舌咽神経の問題はほぼ確実です。
その神経核が存在する延髄付近の問題。
またその神経が当該筋に到達するまでの間、どこかに物理的負荷があるかもしれません。
迷走神経系の問題という場合もあります。
思ったところに手足を持って行けないという問題が併せて出てくるようであれば小脳の検査が必要です。
これらが複合した問題というは最も多いパターンです。
中枢神経系は作動条件にシビアなので、ちょっとしたことでもトラブルに見舞われます。
なのでこれらの兆候が見つかったからといって必ずしも病理問題が存在するとは限りません。
しかし放っておいて良いものとも言い切れません。
痛みは比較的自覚しやすいですが、これらの運動麻痺、とくに脳神経がらみの問題はなかなかわからないことも少なくありません。
違和感が続く、あるいは首から上の「イメージ通りにならない感じ」がとれないときは、きちんと検査を受けてみましょう。