テストステロン
テストステロン
前回のエストロゲンに続いて性ホルモンであるテストステロンについて書いてみます。
両者とも同じカスケード上にあり、元は同じ生体物質から出発しています。
ステロイド骨格を持つテストステロンは主に男性性を支持するホルモンです。
男性が母親の胎内にいるとき、4週目あたりからテストステロンの暴露を経験します。
これにより中枢神経系が女性性から離れ、男性としての心理を獲得するといわれています。
第二次世界大戦末期、ドイツでその頃妊娠中だった女性から生まれた男の子は、長じて同性愛に傾倒するケースが多かった、という話を聞いたことがあります。
テストステロンの暴露量に安定性がなかったことが原因、という話なのかもしれません。
よくスポーツの大会などでドーピングというものが問題になっています。
薬物による肉体強化のことですが、筋肉増強剤として古くから使われてきたものの一つに、このテストステロンがあります。
タンパク同化作用という、筋肉にタンパク質を取り込む働きが強く、その上で負荷をかけると筋繊維はどんどん太くなるというわけです。
しかし、これらを維持する生理的な反応は同時に多血症や血圧の上昇を招きやすくなります。
当たり前ですが本来必要に応じて体内で生産されるべきものですから、不用意に摂取することは体の中の恒常性を乱す要因になり得ます。
大量に取り込まれたテストステロンの代謝はその後の生理機能にどのような反動をもたらすのかは、想像に難くないでしょう。
もちろん慎重にコントロールされた投与は重要な治療法として確立しています。
特に低テストステロン症は心臓血管系との関連が指摘されており、前立腺の治療においても使用されることがあります。
標的器官においては何よりも強制力があるのがホルモンですが、恐れず怖がらず甘く見ないようにして使用されるのであれば有効性の高いものだというのが私の感想です。