ステロイド
ステロイドホルモンについて
最近、アトピー性皮膚炎をはじめとしたいわゆるアレルギー反応による問題が多くなっているように思えます。
それにつれてステロイド剤の使用頻度が増えているとは、正式なデータをみたわけではないですが、よく聞く話ではあります。
ではこのステロイド剤、怖い怖いと言われていますが実際はどうなのでしょうか。
ここではステロイドの一つであり、強い抗炎症作用を持つ副腎皮質ホルモンのことを指すものとして考えてみます。
まず、このホルモンを含む合成剤は非常によく効きます。
何より抗炎症剤として、これほど強烈なものは市販薬の中にはそう無いでしょう(注1)。
炎症を起こすプロセスはいくつか確認されていますが、その中で細胞膜から不飽和脂肪酸であるアラキドン酸を引っ張ってきて炎症を起こさせるのが一般的です(注2)。
そのアラキドン酸を細胞膜から引き抜く酵素と合体して、炎症反応そのモノを押さえ込んでしまうのが、副腎皮質ホルモンの中の糖質コルチコイドと呼ばれる成分です。
因みに鉱質コルチコイドというのもあって、これは電解質の中でナトリウムの動きにとても強く関与しています。
糖質コルチコイドは糖質、タンパク質、脂質の代謝にも関係していています。
次にこのホルモンは好中球という白血球の一種の働きを抑制します。
好中球は免疫の現場における主役の一つですから、ある種の免疫抑制剤としても機能します。
また、使い続けると効きづらくなったり、ミトコンドリア上におけるエネルギー産生にも影響を及ぼすと考えられています。
しかし現在これが開発、改良されているおかげで受けることのできる恩恵は、少なくともこれを使わないことによるメリットよりも遙かに大きいものであると確信しています。
おもしろ半分に使い続けるべきではありませんが、むやみやたらと嫌うのは重症化している炎症反応をのさばらせる結果にもなりかねません。
経験豊富な医師の判断のもと、必要に応じて使うのであれば、きっとすばらしい効果を発揮する薬であろうと私は思っています。
注1:ステロイド剤入りの軟膏などは薬局などで買うことができますが、法改正によって身元確認などが行われることもあります。
注2:アラキドン酸はホスホリパーゼA2という酵素によって遊離させられ、これによってできる生理活性物質の総称をエンコサノイドといいます。